木の香りを科学する
先日、東京で開催された杉のセミナーに参加してきました。今回のテーマは「香り」です。昔から日本人は様々な「香り」に対する文化を持っていました。歴史的に有名なのは「沈香木」や「白檀」といったもので小野小町はこの香りを好んで使っていたそうです。
最近では「アロマセラピー」という言葉が良く使われ、これは「Aromatic compound(芳香族化合物)」という言葉からきているようでこれは「良いにおい」がする物質を指していますが世の中には当然、嫌な匂いもありこれを効果的に使って忌避物質として防虫剤なんかに使っています。
では人間はどうやって匂いを感じるのでしょうか?当たり前のことですが人間は鼻から匂いを取込み鼻の中の粘膜でその成分を感知して嗅覚神経を通して脳細胞の「海馬」というところに匂いの記憶としてしまい込むのだそうです。だから良く昔、好きだった男性や女性の匂いをある日、どっかで感知すると思い出したりするのですね(笑)
最近は森林セラピーという言葉が認知されて森の中でリラックスする効果が期待されています。ではどうして森の中にいると人間はリラックスできるのでしょうか?現在、この現象について様々な分野から研究が行われていますがこれを「香り」という観点からも研究が進んでいます。
現在までの研究ではどうしてもアンケート調査に重点が置かれこの場合はデータに主観性が入ったりしてハッキリとした効果を説明出来ない事もあるのですがこれを今後、科学的に解明していこうという研究も進んできました。
人間の自律神経には大きく「交感神経」と「副交感神経」があり「交感神経」は活発に人間が活動する時に効果を発揮し「副交感神経」は睡眠中や安静にしている時に優位に働いています。この「副交感神経」の効果が近年のストレス社会を過ごす現代人には大きな期待がもたれています。
森の中にいると檜や杉の香りに包まれます。この木の香りが人間の体にどのような作用を起こしているのでしょうか?例えばマウスによる実験では「サイプレス(豪州ヒノキ)」という木の板材を床材に使用した飼育箱とそうでない飼育箱で育てたマウスとではその体重変化に顕著な差がでたそうです。
その体内で何が起きていたかというと血中のコレステロール濃度が木の板材を使用していたマウスの方が三分の二に低減していたそうです。
人間の被験者に対する実験も進んできており被験者に外部との環境を隔離した状態である一定の香りを定期的に嗅いで貰い脳波の変化を測定すると様々な条件下で明確な反応が出る可能性が分かってきました。
具体的にいうと例えば杉やヒノキから香り成分(精油)を抽出しその香りを嗅ぐと副交感神経が刺激されて鎮静効果が得られると言われています。しかし、これにはまだまだ統計学上の実験数を増やしていく必要があります。
これからは森林の香りが人間の体に及ぼす癒しの効果について医療関係者との共同研究や林床実験が必要になってきます。
しかし、人類は間違いなく森林の恩恵を受けて長い年月を過ごしてきました。これからも森林を大切にして守り通していかなくては人間の明るい未来は無いと思います。
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