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2009/11/17

歩き続ける人

 その人と初めてあったのはもう5年程前になる。いつものように朝、事務所に向かって車を走らせていた時彼は向こう側から歩いて来た。少し右肩を下げて体が少し傾いて見えた。もしかしたらリハビリか何かで歩いているのかな?と思った。

 それから毎日、彼とすれ違う日々が始まった。彼は、雨の日も風の日も雪の日も毎日歩き続けていた。私はいつも彼とすれ違うとき右側車線にはみ出して出来るだけ距離を空けるように様にしてすれ違っている。かれはそんな私に視線を送る事もなく、いつも俯き加減に歩いてゆく。

 ある日、休日で自宅からいつもとは逆の方向に車を走らせていたら又、彼にすれ違った。一体、彼はどこからどこまで歩いているのか不思議で仕方なかった。そんな毎日が何年も続いていた時、ふとした事から彼の事が少し分かった。

 仕事でいつもの通勤に使う道をいつもとは違う時間帯に車で走っていたら知り合いに偶然出会い。すれ違って少し走ってから知り合いだと気づいて車を道の横に寄せて止めて挨拶をした。

 「久しぶりですね~散歩ですか?」「いや~健康の為に時々歩いているんですよ」そこで私はず~と気になっていた件の彼の事を尋ねるともなく話してみた「いつもすれ違う人でどんな天気の日でも毎日歩いている人がいるんですよ」「あ~知ってる。うちの近所の人でね、毎日、大泉駅まで歩いていって駅前で体操して又小泉駅まで戻ってきてから又引き戻して自宅に帰るんですよ」と言う。

 大泉駅から小泉駅まで距離としては約6kmだからそのちょうど中央付近から歩き始めているとの事なのでその距離約往復12kmとなる。しかもそれから小淵沢の道の駅へもよく歩いていくとの事、一体、毎日どのくらいの距離を歩いているのだろう?恐らく20km以上は歩いている計算になる。しかも、毎日毎日である。

 5年前、初めて会った時は少し傾いていた体は今ではほぼ普通の姿勢に戻っている。恐らく筋肉がついて歩く姿が直ってきたのだろうと思う。僕は昔、陸上競技をしていたので少しは走る姿勢をみるとその人の癖が分かる。体が傾いている人はやはり左右の筋肉のバランスが何らかの理由で崩れている場合が多い。

 冬の雪に残された足跡を見てもその人の癖が分かる。ある程度年齢を重ねた人はどうしても歩く足の上げ方が弱くなって少し摺って歩くようになり雪の残された足跡もつま先から少し長く雪を摺って歩いたような足跡になってしまう。

 それでも毎日、毎日歩き続ける事により徐々に足が上がるようになり足跡が変わってくる。彼も長い年月歩き続ける事により本人が気付いているのかどうか知らないが次第に体のバランスがとれてきたのだろうと思う。

 しかし、毎日同じ道を同じように歩き続ける事は簡単そうで実はとても忍耐の居る事だと私は思う。どういう事情で歩こうと決心したのかは分からないが毎日すれ違うその姿には執念のようなものを感じてしまうけどそれは他人が勝手に思うことで実は本人はそんな事なくて日常の習慣としか思っていないのかも知れない。

 私にはとても真似は出来そうもない。雨がふっては今日は辞めようと思い、雪が降っては危ないから辞めとこうと言い訳し、とにかく今日は特別だからという言い訳ばかり毎日考えていそうである。

 歩き続ける事、それは人間としての誇りなのかもしれない(ちょっとオーバーか・・・)これから先、あとどのくらい彼とすれ違うのか知らないけどきっと彼は毎日、俯いて私に気付く事はないと思う。

コメント

その方はもしかして我が家の下の方に住んでおられる方ではないでしょうか?
以前、夕方に散歩されている姿を良く見たのですが、数年前から全く見かけなくなりました。車は家の前にあるのでどうされているのだろうと気になっていました。
足腰は鍛えていないと直ぐに衰えますね!私もちょっと、、、
ちなみに私が思っている人と同じ方ならキコリさんをチラリと見てチェックされていると思いますよ(笑)

泉原原人さんこんにちは。
そうですかご近所の方ですか、勿論今朝もお会いしました。そういえばチラッとこちらを見たような・・・
こちらも足腰はすっかり弱ってしまい・・・

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八ヶ岳でのログハウス生活 ---木の家設計施工 森のすまい工房(有限会社アシスト

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