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2006/09/24

古民家

Kominnka 先日、地酒の蔵元「谷桜」さんの蔵に併設されているギャラリーで古民家の催しが開かれました。私の事務所がある北杜市大泉町には谷戸地区という古民家群があり明治から昭和初期に建てられた築100年程度の住宅群が美しい町並みを形成しています。2年程前からこれらの古民家群の調査を私も会員となっている景観の会が県から委託されて実施した経緯から今回、この調査の結果を多くの人に知って貰うと共に実際にこれらの古民家に住んでおられる方や古民家を再生した方達にパネラーとなって古民家に住むという事についてその実態や苦労話をして頂きました。

 実際にこれらの古民家を所有しておられる方は当然、地元の方ですが2代目、3代目の方達は普段は別のところに住んでおられて週末や休暇の時に帰ってこられて維持しておられる方やあるいは親から引き継いだものの痛みがひどくて一旦解体した上で再生して立派に暮らして居られる方などその形態は様々です。

 これらの方達の話を聞いていて何となく肩から力が抜けてホッとした気持ちに私はなってしまいました。それは何故かというと普段、建築の仕事をしている関係から普段はお客様との打ち合わせや役所の申請関係の話を聞く事が多いのですが現代住宅の取り巻かれている環境はやれ高気密・高断熱だのオール電化住宅だのがもてはやされており私は普段から何となく「違うんじゃないかな~」と思い続けていたのですが、何が違うかというと「住む」という事と自然との共存という事とがかけ離れてきているような気がしているからなんです。東京のど真ん中に住むのなら分ります。でも八ヶ岳のこんなに自然溢れるところに何故、高気密・オール電化なのかな~と思っていたからかも知れません。誤解を招かないように言いますが私はこれらが悪いといっているわけでは有りませんので念の為・・・

 古民家に住む方達の話は何の気負いもなく要約すると次のようなものでした。

1、とにかく冬は寒い、寒くてたまらん。昔は冬の朝おきたら口の周りに霜がついていたり雪が吹き込んでいたりするのは当たり前だった。でも今は冬があんまり寒くなくなったので我慢できるようになった。寒いところに住むんだから寒さになれるしか無いと言われた。

2、雨漏りはするし茅葺を直すと家一軒くらい簡単に立つほど費用がかかるので取り合えス穴の開いたところを塞いでいる。それでも親から引き継いだ大切な家を壊す気にはなれないんだよね。

3、150年経った古民家を決心して再生に取り組む事にした。先ず、5年かけて県内の古民家をかたっぱしから覗いて勉強した。その上でどういう風に再生すれば良いか実際に古民家に住んでいる人に話を聞いてひとつひとつ決めていった。解体工事が始まった時は不安そうな顔をしていた親が立派に再生した家を見たら凄く喜んでくれてそれが一番嬉しかった。再生で一番こだわった所はとにかく躯体はいじらない事にした。基礎も昔の束石は絶対動かさないでくれと頼んだ、これがあるから地震があっても生き残ってきたと言われた。それと断熱はしっかりやり直したね。

 こんな調子でした。4人のパネラーの皆さんの話には家と暮らしが深く結びついておりこの地方の季節感や環境が深く関わっているな~と感じました。一言でいうと里山の暮らしが住まいに深く影響しているという事なんです。風の向き、産業、雨の降り方等のその地方独特の環境合わせて家が出来ているという事ですね。これらの古民家群を建てたのは当然、地元の棟梁達です。だから道路を挟んで左右対称なんて家もありそれが全体として一体感のある美しい家並みになっているのです。

 現代の家作りは個人の価値観が最優先で建てられています。八ヶ岳なのに南欧風の家があるかと思えば隣は「〇〇ホーム」の展示場から抜け出てきたような家でその隣はキットのログハウスといった調子です。それらの家並みからは里山の暮らしは感じられません。

 自然に溶け込むような家、古民家にはそういう風格があります。もちろん昔、建てられて古民家と現代技術を駆使した住宅とでは内部の空間の快適性を比べればとても古民家に勝ち目はないと思います。しかし、古民家の良さを活かしながらその技術を中に生かしていく事は可能だと思います。祖先が残した素晴らしい技術を踏襲しながら景観にも配慮した家作りが出来たらといつも思います。家を作ることは出来ても中に住む人達の暮らしを作る事は出来ません。里山にふさわしい家作りとは何でしょう?環境に溶け込む家とは?小手先の技術ではなく地元に根を下ろした棟梁の造る家作りが出来ればな~と感じいった一日でした。

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