本当の「新月の木」とは?
私が所属しているNPO「新月の木国際協会」から電話があり「突然だけど今日、打ち合わせに箱根に来れる?」との事、幸いなんとかやりくりすれば行けない事もなかったので一昨日、アタフタと箱根に駆けつけました。もともとは昨日が講演会だったのでそのつもりでスケジュールを組んでいたんだけど突然の召集で駆けつけたワケです。
今回の講演会は日本における森林学の大御所「本多静六」氏についての話をその親戚でもある遠山 益氏や孫にあたる本多健一氏に語って頂くのが基調講演になっていたのです。遠山先生の話はシロウトの私達にも分りやすくユーモア溢れる素晴らしい内容でした。
しかし、私が呼ばれたのはそういう話ではなく現在、私達が進めている新月伐採法の普及活動に支障が出始めたのです。日本の山を活性化し国産材の普及と安全で良質な木材を提供する為に日本で古来より行われていた新月伐採法を現代に併せて復活させようという運動が広がりをみせたのは非常に嬉しい事なのですが、最近これを真似た活動が並行して広がりをみせ紛らわしくなってきたのです。
具体的には「新月の木」という言葉が一人歩きを始めて本来、樹木が持つ自然のポテンシャルを引き出そうというのが目的なのに単にエコロジカルな営業戦略のキーワードとして使われ始め実態が全然伴わないという事なのです。
「新月の木」は単に「新月の日」に伐れば良いという単純なものでは有りません。自然のポテンシャルを考慮しどのタイミングが一番、伐採に適しているのかを研究し、それが何故良いのかをテストピースを取って研究機関と協働研究を行い繰り返し検証を進めていく必要があります。又、「新月の木」は名前の響きが良いのでとかく「伐り旬」ばかりが取りざたされますが実はもっと大事なのは山で葉を付けたまま一定期間、天然乾燥(「葉枯らし」もしくは「熟成」と呼んでいます)し、更に最も大事なのはその過程が確実に行われたかを第三者(「現認者」と呼びます)が立会いその記録をつける事なのです。
つまり食品と同じようにその木の履歴保証を確実に行うことによりその木に「品格」を与えようとするものなのです。いくら立派な事を口で言ってもそれを証明する記録がなければ意味がないのです。これは最近の企業活動では重要な要素となり履歴保証=トレーサビリテイーと呼んでいます。これが無い、もしくは捏造されたが為に近年、企業の不詳事が絶えないのです。履歴保証は良い事ばかりではありません企業が隠したい悪い事も含まれます。当然、木についても同じ事が言えます。正直にこの不詳事、もしくは意に反する事実を公表するのはとても辛いことです。だけど、現代の情報社会ではこれをしていかないと企業としては成り立たないのです。林業の世界ではこの点がかなり遅れていたと言えると思います。しかし、漸くこの業界でもこのトレーサビリテイーの重要性が認識されてきました。今までははっきり言ってこの木が一体どこで採れた木かも分らない、もしくは分らなくしていたのです。
「新月の木」はこれらの履歴保証をはっきりさせてこの木が一体どこにどのような状態で立っておりどのような姿をしており何時、誰が伐採しどこに運ばれて誰が製材して出荷したかまで記録をつけてその情報を公開しようとするものです。これは山側に大変な負担を強いる事になるのですが今、これをやらないと日本の林業は良くならないという使命に燃えた山側の人達が集まって喧々諤々議論を交わしています。(だからいつも深夜まで議論が絶えないのが悩みですが・・・)
小さな活動が徐々に広がりをみせるにつれこれらの上辺だけを真似する人達が出てくるのは世の常ですが何とかその活動の妨げだけにはならないで欲しいと願います。
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